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~イ・ミンホに会いたくて~韓国俳優イ・ミンホさんを応援しています。彼の作品を日本語に翻訳しながら韓国語を勉強中です。

国際通訳者長井鞠子著『伝える極意』読みました

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タイトルがぱっと目に飛び込んできた『伝える極意』

意志があるから心が届く
中曽根康弘小泉純一郎ホーキング博士……
国内外の著名人が信頼する同時通訳の第一人者が語る、言語を超えたコミュニケーション術。 

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 同時通訳の方の頭の中を覗いてみたい、と思って手に取り、あっという間に読みました。

国際会議などのテレビ中継で、姿はお見掛けしなくとも大変お世話になっているのが通訳者さん。

いつもすごく大変なお仕事をされているな、と興味を持っていたところ、この本に出合いました。

2014年刊行ですが今読んでも、同時通訳の日本語で内容が伝わってくるその裏側では、大変な努力と様々な経験をされてきた姿が浮かび上がって来ます。

 

目次

 

一番印象に残った言葉

「判断の根拠となるべき基礎知識、話し手のバックグラウンドを事前に可能なかぎり頭に入れておくこと」

きちんとした仕事のためには下調べがいかに重要か伝わってきます。

 本からの引用

 第3章 通訳者の生活とその技術

紫式部シェイクスピアで返す
あれはいつだったでしょうか、まだ若い頃、外務省の広報誌だったと思いますが通訳者が特集されたことがあります。

わたしも取材されて取り上げられたのですが、「日本人の話し手が紫式部を引用したらシェイクスピアで返すような、そんな通訳者になりたい」とコメントしています。

もちろん理想としては、いまでも「そうできたら」と思い続けていますが、いうまでもなく紫式部シェイクスピアとではその世界観、文化的背景がまるで違うのです。

紫式部を本質的な部分では英語に通訳することができず、シェイクスピアを日本語にすることも同様で、だからこそ異言語·異文化の狭間に立ち通訳をする者としては 紫式部シェイクスピア の変換を試みるしかないのですが、大それたことをいっています。

"I love you" というのは英語ですが、日本人でも誰もがその意味はわかるでしょう。しかし、これにピッタリとはまる日本語はなかなか見当たりません。

"love" だとか "life" といった単純な、人間の営みの根幹に関わる単語ほど、その解釈には文化の違いが関わってくるのです。

"life" の場合は、特に日本語に訳す際には「命」「生活」「人生」の三つを文脈から読み取り、使い分けねばなりません。

そもそも日本語で「愛とは何カ?」「人生とは何か?」と問われても容易には答えられないと思いますが、適切な訳語を見つけるのはさらに難しいことなのです。

ある俳優は「ある感情を表現する台詞が日本語から英語、あるいは英語から日本語に換わると、表現すべきだった感情が見えなくなってしまうことがある」と言っています。

わたしも通訳者は俳優に似ている、と思うことがあります。それは単に言葉を正確に現すだけでなく、話し手の思惑や感情も表現して伝えなければならないからです。

しかし、それと同時に「どこまでやっていいのか?」というジレンマも通訳者という立場にはっきまとうのです。最後はやはり、その場の判断、ということになります。

だからこそその判断の根拠となるべき基礎知識、話し手のバックグラウンドを事前に可能なかぎり頭に入れておくことが通訳者には求められます。

感想

 紫式部シェイクスピアを対比させて話された時点で、そのスマートさに私はノックアウトされました。

そして私は動画や書かれたものを翻訳するのが好きなので何度もやり直せますが、同時通訳はそうはいきません。

話す人の経歴や人となり、関連する単語や世の中の流れを知らずに通訳はできないとおっしゃったその言葉。

準備と更に記憶力。

そしてその意気込みに圧倒されました。やり直しはないんですものね。

 

けれど引用した後半、俳優のコメントのあたりを読むと、普通の人とまったく同じ感覚も持ってられるんだとちょっと嬉しくなりました。

準備だけでも成り立たないのは、言葉は生き物だからでしょうか。

 

私も言葉に触れることの奥深さに、打ちのめされたり喜んだりしながら頑張ろうと思いました。 

紹介 集英社サイト

『伝える極意』 内容紹介
日本人のコミュニケーション下手が言われて久しいが、加えて昨今はメールやSNSの普及によって、相手に面と向かって対峙したときの「伝達力」がさらに劣化している。著者は、1970年代から様々な国際交渉の場に通訳者として立ち会ってきたが、そのなかで得てきた、言語を超えたコミュニケーションの普遍的「法則」を紹介する。相手が外国人であっても日本人であっても、単に「発言する」だけでなく、しっかりと相手に「伝える」ためには、なにが必要なのか。「話す・聞く」のプロが、国内外の著名人との貴重なエピソードをまじえながら「心を伝える」極意を語る。

 
『長井鞠子』 著者紹介
1943年宮城県生まれ。会議通訳者。国際基督教大学卒業。1967年、日本初の同時通訳エージェントとして創業間もないサイマル・インターナショナルの通訳者となる。以降、日本における会議通訳者の草分け的存在として、先進国首脳会議をはじめとする数々の国際会議やシンポジウムの同時通訳を担当。政治・経済のみならず、文化、芸能、スポーツ、科学ほかあらゆる分野の通訳を担当。

NHK総合『プロフェッショナル 仕事の流儀
第225回 「言葉を超えて、人をつなぐ 会議通訳者・長井鞠子」に出演

引用:集英社 

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