お前の存在自体が禍根だ/イ・ミンホ主演「相続者たち」
ウォンの言葉が、顔いっぱいの傷よりも拳の傷よりもタンに痛みを与えたー小説翻訳2巻7章12
小説 임메아리
翻訳 shiho
ウォンが車から降りるとウンサンがぴょこんとお辞儀をして、あっという間に門の中へと逃げるように飛びこんで行った。
「兄さん」
タンはじっと動かず、兄と向かい合って立った。
久しぶりに家で出会った兄の顔はしかし、見慣れないものだった。
ウォンは答えず、強く手を振った。
タンはその仕草の意味か分からず、黙って兄の顔を見つめ続けた。
「どけよ。扉の前に立ってるから通路を塞いでいるじゃないか」
タンはウォンの言葉を聞いても一歩もよけずにじっと耐えた。
ーよけたら、兄さんは俺を相手にしてくれずに行ってしまいそうだー
「このままずっとホテルで過ごすの?」
「お前は何故面倒をかけるんだ。扉を塞いで立って、余計な事を聞いて」
「まだ帰って来る気にはならないの?」
「ではお前がホテルに行くのか?」
タンは、自分の気持ちを分かってくれないウォンに気分がふさいだ。
「兄さん、本当に僕は、兄さんが持っているものを奪う気なんて全くないんだ」
「また説明しなければならないのか?お前の進む先をお前が決めるんじゃない。帝国グループが決断するんだ。お前はただそうするしかない。だから私にとってお前の存在自体があってはならないもので、禍根なんだよ。それが事実だ」
ウォンの口から出た自分の存在の意味が身にしみて痛かった。
顔いっぱいについた傷よりも、怪我をした拳よりも。
「もう何も言うな。忘れ物を取りに来ただけだ。すぐ帰るから」
ウォンはそう言うと、タンを置いて中に入った。
タンはぽつんとひとりぼっちになって、長らくそこに立ったままだった。
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